輸出入貨物のHSコードがわかると、次のことができるようになります。
このHSコード、通関業者などの専門家に聞く方も多いと思いますが、実は誰でも簡単に調べられるんです。この記事では、HSコードを調べるとっておきの方法をお教えします。現役の通関士でも知らない方が多いと思います。どれも登録不要・無料で使えるんですよ。
【前提】そもそもHSコードの選定は難しい
HSコードは輸出入する商品を6桁の番号により分類するもので、国際的な分類ルールが定められています。1つ商品に対して、必ず1つのHSコードを付けなければなりません。必ず1つというのが、とても難しいのです。
たとえば、ボールペン、シャープペン、多機能ペン(1本でボールペンやシャープペンなどに切り替えられるペン)で考えてみましょう。ボールペンとシャープペンは、それぞれHSコードが存在するので簡単にHSコードが決まります。
一方、多機能ペンというHSコードは存在しません。そして、必ず1つのHSコードを選定しなければいけないので、ボールペンとシャープペンの2つのHSコードを使うこともできません。多機能ペンの場合は、重要な特性を与えているもの(ボールペンかシャープペンかその他のもの)に分類することになります。国際的な分類ルールはあっても、商品のとらえ方次第で、分類先が変わってしまう可能性があるのです。
この難しさを一気に解消するツールを最初の初級編でご紹介します。
さらに理解を深めたい方のために中級、上級、番外編もまとめています。また、実際にツールを使ってシャープペン、多機能ペン、Apple Watchを検索できるかも試してみました。
【初級】英単語を入力するだけ
検索結果 シャープペン:あり
多機能ペン :あり
Apple Watch:あり
和製英語のSharp Pencilでも結果が出ます。多機能ペンも詳細情報を追加すれば、正しいHSコードにたどり着けます。さらに、Apple Watchと入力しても答えが出るほか、WiiやPlayStationでもHSコードが返ってきます。
実用に耐えうるすばらしいツールです。日本ではあまり知られていません。
このツールさえあれば、たいていの商品のHSコードがわかります。直感的に検索でき、かつ精度の高い(信頼できる)結果を示してくれます。
検索方法
商品名を入力して検索します。最適なHSコードを特定するための情報が足りなければ、検索ツールが詳細情報を要求してきます。選択形式の質問に答えるだけで、国際的な分類ルールに基づいた結果がでてきます。
(1)シャープペンシルを調べる場合
①シャープペンシルと入力後、Classifyをクリック。
②sharp pencilは和製英語のため、詳細情報を要求された。
選択肢からシャープペンシルにふさわしいpropelling or slidingをクリックする。
③HSコード9608.40が示される
(2)多機能ペンを調べる場合
①多機能ペンと入力すると、詳細情報を要求される。
どの選択肢を選ぶかで、HSコードが変わる。
②例えばボールペンを選択すると、9608.10が示される。
一般的な商品名以外に、一部のブランド名も認識します。
例えば、Apple Watchで検索が可能です。腕時計のHSコードは9101または9102ですが、Apple Watchはウェアラブルデバイスとして8517.62に分類されます。初心者がこの分類を自力するのは難しいですが、このツールを使えば問題ありません。
化学物質の場合は、CAS番号でも検索できます。
【中級】実務者には必須の情報
検索結果 シャープペン:あり
多機能ペン :なし
Apple Watch:なし
シャープペンのHSコードを調べるには、先頭2桁であたりをつけられる程度の知識は必要です。基本自力で調べることになるので、繰り返し調べることで知識が増えます。
関税率表の解釈に関する通則、関税率表解説、分類例規は、実務者が必ず押さえていなければいけない国際ルールです。特に、関税率表解説は重要で、それぞれの品目にどのようなものが含まれるか、含まれないかが定義されています。分類結果の最終確認のために、関税率表解説を使うのもよいでしょう。分類例規では、例えば85類にスマートウォッチという単語が挙げられており、腕時計のHSコードとは異なることがわかります。
【上級】通関士よりも詳しくなれる
検索結果 シャープペン:的確な結果が出ない(候補が多すぎる)
多機能ペン :的確な結果が出ない(候補が多すぎる)
Apple Watch:的確な結果が出ない(候補が多すぎる)
日本関税協会のツールでの検索は完全一致が条件となっています。Sharp Pencil や Mechanical Pencilでは結果が出ず、Propelling Pencilと検索する必要があります。米国CBPとEUのツールは、あいまい検索ですが、結果に出てくる候補が多すぎます。
通関士や税関と同じレベルで本格的に調べるならこのツールを使います。単純なテキスト検索しかできないので、難易度は高く、使いこなすには知識と経験が必要です。
検索結果 シャープペン:対象外
多機能ペン :あり
Apple Watch:あり(米国CBP)
分類が難しいものは、日本税関と米国CBPの事前教示事例を検索します。HSコード決定までの過程(分類の考え方、比較検討したHSコード、適用するルール)が書かれており、読むだけでとても勉強になります。
検索方法
(1)多機能ペンを調べる場合(日本税関)
①多機能 と ペンの間にスペースを入れる方法がおすすめ。
②事例が表示されたら、貨物概要を読み、
調べようとしている商品に類似する事例があるか探す。
③類似の事例があれば、詳細画面の分類理由で適用ルール等を確認する。(2)多機能ペンを調べる場合(米国CBP)
①検索したい商品名を入力し、表示された事例の中からは類似の商品を探す。
②詳細画面(右半分)で分類理由を探し、適用ルール等を確認する。
【番外編】AIで商品を自動分類するデモツール
検索結果 シャープペン:あり
多機能ペン :あり
Apple Watch:あり
複数のHSコードの候補を確率とともに示してくれる点が優れています。しかし、精度はいまいちで、本来あるべきHSコードが最上位に出てきません。
AIを適用した検索システムです。検索バーに商取引の内容を入力すると、対応するHSコードとその確率が表示されます。
検索方法
(1)シャープペンシルを調べる場合
①Sharp Pencil と入力し SUBMITボタンを押す。
②推奨HSコードとそれぞれの確率がでてくる。
③9608.40があるべきHSコードだが、最上位に出ていない。
(2)多機能ペンを調べる場合
シャープペンシルの場合と同様、複数のHSコードが提示される。
比較対象が示されるのはとても役立つが、最上位のHSコードが正しいとも限らない。
まとめ
各種ツールを比較すると、Census Bureau Schedule B Search Engine が最も使いやすく精度が高いです。ぜひ業務に活用してみてください。