いつもトラブルなく通関が終わる。それは当たり前のことなのですが、ときにはイレギュラーやミスが発生します。みな人間ですから。
- たまにあるもの: インボイス訂正、出荷キャンセル
- ごくまれにあるもの: 貨物誤り、法令確認漏れ・判断誤り、ライセンス不一致
- 特に通関業者起因のもの: 申告書入力ミス、商品の分類誤り
さて、こんなときどうしたらよいでしょうか?
初動でのポイントは1つだけ。
故意と一部の重過失以外は、罰せられませんので過度の心配は無用です!
通関業者に連絡すると、申告を止めたり、貨物を止めたり、状況に応じてあれこれやってくれます。通関手続きの進捗度合いによって、できることは変わります。航空貨物の場合は、20-30分ほどで状況が変化することもあります。
トラブル解消方法
申告後も、税関審査中、許可後、搭載後で手続きが異なります。
通関業者のアドバイスに従って対応すればよいですが、どのような手続きがあるのか事前に学んでおきましょう。
申告前
書類や貨物の不備は、申告前に手直しするのが基本です。申告前ならできる選択肢がたくさんあります。
申告すると、税関に断ることなく申告内容を訂正したり、貨物の中身を確認したりすることができなくなります。
申告中(許可前まで)
申告中、税関審査で指摘や照会を受けて、書類の誤り、貨物の不一致が見つかることあります。申告中にとれる方法は3つ、資料の追加提出、申告内容訂正、申告撤回です。
資料の追加提出
税関は申告内容に疑義を持つと、通関業者を介していろいろな質問をしてきます。口頭説明で済むことも多いですが、説明資料を追加提出することで、輸出許可を得られる場合もあります。当たり前ですが、疑義が解消できるまで輸出許可はされません。予定していたフライトは変更することになるでしょう。
申告内容訂正
インボイスの軽微な誤り、申告書の誤入力、計算ミスであれば、インボイスの差し替え、申告内容の訂正をすれば、税関から輸出の許可がおります。
申告撤回
法令確認漏れ・判断誤りなどの重大な誤りが判明したとき、申告内容訂正が認められない項目(申告種別、輸出者名など)を通関業者が誤入力したときは、申告を撤回する必要があります。
法令には、申告後許可前までは申告撤回ができると書いてあります。
しかし、実務上は申告撤回というのはおおごとです。
そもそも通関士は書類に問題ないことを審査したうえで申告しています(税関の許可を得られると思えないものは申告しません)。だから、申告撤回に至ること自体が大きな問題なのです(私自身、申告撤回をした経験は1度もありません)。
その他 申告中の出来事
税関の書類審査、貨物検査になった原因を気にする輸出者がいます。しかし、通常その理由はありません。何度も輸出している貨物でも書類審査、貨物検査になりえます。輸出許可がおりるのは必要な検査を経てからと決まっているからです。
近ごろ税関は柔らかくなったのか、『必要な検査にご協力を』と呼び掛けていますが、勘違いしたらいけません。書類審査や貨物検査になっても問題ないように準備しておき、書類審査なり貨物検査なりやりたければどうぞやってください、というくらいの心構えができていると素晴らしいです。(ただ、検査になって輸送・再梱包などの追加費用が発生するのは痛いです。)
許可後
航空機への搭載前までにできる手続きは3種類あります。輸出取止め再輸入、輸出許可取消し、船名・数量等変更です。船名・数量等変更をして輸出を継続したい場合は、フライトまでの時間との戦いになります。
輸出取止め再輸入
輸出許可を受けた貨物すべての輸出をキャンセルして、国内に引き取る場合の手続きです。NACCSシステムを利用した申告で、変更不可項目の変更が必要になった場合も、輸出取止め再輸入を行います。通常の輸入手続とは異なり、関税、貿易管理の不要な簡易な申告になります。通関業者が申告してくれるので、特別なこと準備は不要です。
輸出許可取消し
特定輸出許可を受けた貨物で、輸出をキャンセルする場合に行います。そのほか、以下の場合には税関により特定輸出許可が取り消されます。
- 特定輸出申告の品名と輸出貨物が相違することが判明した場合
- 特定輸出申告ができない貨物を特定輸出申告し、輸出許可を受けた場合
- 事故等により、輸出貨物が特定輸出申告の品名と異なることとなった場合
船名・数量等変更
以下の変更をすることができます。
※航空貨物の場合を想定しており、海上貨物の取り扱いは記載を省略していますので、ご注意ください。
- 貨物の搭載予定機の変更
- 貨物の積込港の変更
- 輸出許可後の貨物の価格の変更
※金額誤差が小さい場合は、価格の訂正を省略可能ですので、通関業者に相談するとよいでしょう。税関での価格変更が不要であっても、貨物に関係する他法令の規制があれば所管省庁への確認が必要です。
価格訂正の省略可能な範囲
- 輸出申告書に記載した価格が20万円未満で、かつ、本来輸出申告書に記載すべきであった価格が20万円未満の場合
- 変更しようとする価格と輸出申告書に記載された輸出統計品目表の所属区分ごとの価格の差が千円未満の場合
許可後(航空機搭載済、海外現地到着済)
航空機への搭載が完了した時点で、輸出されたという扱いになります。
原本訂正
貨物の海外現地に到着後に、誤りが判明することがあります。軽微な誤りで書類によって必要な確認が取れるなど、税関が訂正を認める場合には、輸出許可書原本の訂正を行うことができます。原本訂正が認められるかどうかの基準は明確になっておらず、税関の判断によります。
輸入申告
輸出規制品を海外に輸出してしまった場合など、重大な誤りがある場合は、税関から貨物の積戻し(日本への返送)を指示されることがあります。この場合は通常の輸入手続きをとります。なお、貨物がいったん航空機に搭載された時点で、通常の輸入手続が必要になります。
通関業者に都度アドバイスしてもらうのもよいですが、あらかじめ知識を持っていれば落ち着いて対応ができます。さらに通関業者や税関との対話もスムーズに進めることができるでしょう。
輸出には修正申告という手続きがないことも知っておきましょう。誤解(用語を誤用)している輸出者は多いです。