通関情報調査室

AEO輸出者ではたらく、元通関士のブログ Former REGISTERED CUSTOMS SPECIALIST

旅具通関と業務通関の違いを考える

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通関は、旅具通関と業務通関の2つに大別されます。
おおまかには次のような理解になると思います。

  • 旅具通関 旅行者の手荷物等に適用される通関手続き
  • 業務通関 一般商業貨物に適用される通関手続き

←左 旅具通関 / 右 業務通関→ ※あくまでもイメージです。

この記事では、旅具通関、業務通関について、専門的に一歩踏み込んで考えます。
関税法基本通達には、旅具通関という用語が記載されています。一方で、業務通関という用語は一切使われていないのです。旅具通関、業務通関とはいったい何なんでしょうか?

旅具通関と業務通関(公的記述から考える)

関税法基本通達に、旅具通関は特殊な通関方法の1つとして書かれています。これに対して、業務通関は一般的な通関方法ということになります。

旅具通関

関税法基本通達の説明は、次のようになっています。

旅具通関とは、本邦から出国する/外国から入国する旅客等が携帯または別送して輸出/輸入する貨物について、一定の範囲を定め簡易な通関手続きを認めるもの

また、税関関係用語集 : 税関 Japan Customs には次の説明がされています。

旅客又は乗組員の携帯品、別送品等の通関についてはその輸出入形態の特殊性から簡便な手続が認められており、一般貨物の「業務通関」に対して「旅具通関」という。

旅具通関の範囲として、金額や個数などの条件があります。その条件から外れるものは業務通関をしなければなりません。輸出貿易管理令の許可・承認、輸入貿易管理令の承認が必要な場合も業務通関が必須となります。

手荷物として携帯していれば、必ず旅具通関ができるわけではないことに注意が必要です。

業務通関

上記税関関係用語集には、旅具通関と対比して業務通関という用語が登場しています。しかし、業務通関の用語説明はされていません。旅具通関の説明をもとにまとめると、業務通関は「一般貨物+旅具通関できないものの通関手続き」ということになります。

通関業者に申告を依頼してもらうものが業務通関だという説明は正確ではありません。なぜなら、通関業者に依頼せず自社通関(輸出企業自身で申告)をする場合も業務通関(一般的な通関方法)に含まれるからです。

では、業務通関の”業務”は一体どこからきた言葉なのでしょうか?

過去通関業者に勤めていましたが、ずっと疑問に思っていました。

旅具通関と業務通関(個人的解釈)

個人的に用語の由来は次のように解釈しています。

  • 旅具通関 税関の旅具通関部門が担当するから旅具通関という     
  • 業務通関 税関の業務部門が担当するから業務通関という

一般人からすると税関は1つです。しかし、税関・通関業者から見た場合、旅具通関部門と業務部門は全く別の組織なのです。

  • 旅具通関部門 旅客、乗組員の携帯品等の取締り、検査及び徴税を行います。監視の範疇でそこで働く方は監視官です。
  • 業務部門 輸出入貨物に係る審査、許可及び承認、輸入貨物に係る関税等の税率の適用、確定及び徴収等を行います。業務の範疇でそこで働く方は審査官です。

旅具通関と業務通関の違いは、税関において申告を受ける部門の違いにも関連がある(それに伴い手続きも異なる)と言えます。

まとめ

旅具通関とは、主に旅行者の手荷物等に適用される簡易的な通関手続きです。税関の旅具通関部門が担当します。

業務通関とは、主に一般商業貨物に適用される通関手続きです。税関の業務部門が担当します。

質問や相談をしたい場合は、適切な部門に連絡をしないといけません。(間違えても税関が正しい連絡先を教えてくれますけどね。)