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関税関係法令を学ぶ |その1 法律概観

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関税関係法令について、全体像が説明された資料・教材がなかなか見つかりません。

どのような体系になっているでしょうか?そして、どのように学んだらよいのでしょうか?

一般生活を送るうえでは(海外旅行や個人輸入をする場合も含めて)関税関係法令を知らなくても問題になることはほとんどありません。

一方、仕事で税関との関わりが強い部門に所属している人は、ある一定の関税関係法令は知っていると思います。

実は、関税関係法令は想像以上にすそ野が広いのです。税関HPの所管法令のページ*1を見ると20本の法律が掲載されています(2024年3月現在)。しかし、税関HPに掲載されている20本が関税関係法令のすべてではありません。

今回、通関の実務に必要な知識の習得を主眼に置いて、整理してみました。(この記事には、通関士試験合格を目的とする場合に学習が必要な範囲から外れる内容もありますのでご注意ください。*2,*3

関税関係法令の概観

関税関係法令は、関税法関税定率法関税暫定措置法(上図1~3)を基本として、特例法、条約など(上図5~8)によって構成されています。

関税法、関税定率法、関税暫定措置法は関税三法と呼ばれる中心的な法律です。しかし、各種手続きがこの関税三法に集約されているわけではありません

特別法がある場合には、特別法が一般法に優先するのが法律のルールです。実務を行う上では、特別法(上図でいう特例法や条約など)に手続きの根拠が定められていることがあるため、特別法にどのようなものがあるかを知っておく必要があります(後日詳しくまとめる予定です)

また、通関業者にとっては、関税三法と並んで通関業法(上図4)が重要な法律です。

いつから学ぶのか

わたしの社会人人生は通関部門でスタートしました。当初から通関士資格は保有していましたが、法令に詳しいわけではありませんでした(通関士試験で学ぶ範囲は限られますし、通関士試験が終わったら覚えたことを忘れていました)。

新人のうちは問題ありません。おそらく先輩が助けてくれるでしょうし、そもそも法令に照らして判断を要する案件は新人には回ってこないからです。また、教わった手順どおりに仕事をしていれば業務は進みます(法令を意識しなくても、最低限必要なことは、業務手順に組み込まれているのが普通です)。

通関業者に勤務していて、申告書作成等の仕事に慣れてきたら、少しずつ関係法令を学ぶ努力をしていくべきです。なぜなら、経験したことのない案件にぶち当たることが出てくるからです。通関士として独り立ちしたら、自らの審査で申告するかどうかを判断するのです。(他人に相談することも可能ですが)最終的には自分で判断しなければいけません。

通関業者以外(荷主企業など)で働いていても、同様に仕事に慣れてきたら、その業務の背景・根拠となる法令は何かを調べてみるのがよいでしょう。将来の業務改善につながるヒントが埋もれているかもしれません。

焦る必要はありません。気になること・興味のあることが出てきたら、調べてみましょう。

調べた結果や覚えたことが仕事に直結するとは限りません。しかし、仕事を続けていくと、自分で身につけた法令知識が役立つ日がいつか訪れます。

学ぶ手掛かりはあるか

関税関係法令に触れる前に、法学入門の書籍を読んでおくとよいです。

わたしはおすすめは『法令読解心得帖』です。
元法制局キャリアが教える 法律を読むセンスの磨き方・伸ばし方』も同様に法令の学習に役立つ内容になっています。

これらの書籍で法令読解の基礎が身につけることによって、関税関係法令だけでなく、あらゆる法令の理解度を格段に上げられます。

法令の読み方を知らずに、わかったつもりになっている人、条文ではなく経験で判断している人は意外と多いです。法令を自力で読み解ける能力は、仕事をするうえで大きなアドバンテージです。

法令読解心得帖
法律の条文はどのようなルールでつくられているのか。学習者が知っておきたい作法、法律・政省令の構造をわかりやすく伝えます。(内容紹介より)

元法制局キャリアが教える 法律を読むセンスの磨き方・伸ばし方
誰も教えてくれなかったリーガルマインドと法律を読み解くセンスを最短で養う方法を公開。法律を学ぶすべての人に役立つ!(内容紹介より)

 

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