前回の記事 関税関係法令を学ぶ |その3 関税三法の下位法令 の続き
輸出入手続きに関係する特例法や条約について です。
特例法、条約
この記事では下図5~8の特例法と条約を扱います。
関税制度の基本的な枠組みは、関税三法とその下位法令・通達によって規定されていますが、特例法や条約が日常業務の根拠になっているものがあります。
特例法は、税関HPの所管法令等一覧で確認できます。
条約は、外務省HP条約データ検索から検索できます。
主な特例法
これらの法律は必要になったら学べば十分です。太字の特例法は通関士試験の出題範囲に含まれているので、概略だけ触れておきます。
NACCS法は、NACCS(電子情報処理システム)による手続きを規定した法律です。日本における全輸出入申告の約99%はNACCSが用いられているので、重要な意味のある法律です。関係する通達まで読むと意外な発見があるかもしれません。
地位協定特例法は、関税等の免除、税関検査の免除などについて定めたものです。
コンテナー特例法は、コンテナー通関条約とTIR条約を補完するものです。
ATA条約特例法は、ATAカルネの取り扱いについて定めたものです。(イレギュラーが発生したときに、はじめて法令、通達を読むことになるでしょうか。私自身は細かく読んだことはないですが、実務で困ったことはありません。)
主な条約
日本国憲法第98条第2項は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と規定しており、我が国が締結し、公布された条約等は国内法としての効力を持ちます。
関税に関係する条約は多数あります。通常の輸出入者はこれらの条約を意識しなくても特に問題ないと思います。(条約の詳細まで知識をもっていたら怖いものなしです。)
二国間条約
通商関係条約、航空協定、賠償協定等 ※多数あり、関税関係条項の取り扱いに関連
多数国間条約
- 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(WTO 協定)(平成6年条約第15 号)
- 貨物の原産地虚偽表示の防止に関する 1891 年4月 14 日のマドリツド協定(昭和 28 年条約第8号)
- 虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示の防止に関する 1891 年4月 14 日のマドリツド協定(昭和 40 年条約第 10 号)
- 税関手続の簡易化に関する国際条約(昭和 27 年条約第 17 号)
- 国際民間航空条約(昭和 28 年条約第 21 号)
- 商品見本及び広告資料の輸入を容易にするための国際条約(昭和 30 年条約第 16 号)
- 観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条約(昭和 32 年条約第 16号)
- 観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条約に追加された観光旅行宣伝用の資料の輸入に関する議定書(昭和 31 年条約第 15 号)
- 国際連合の特権及び免除に関する条約(昭和 38 年条約第 12 号)
- 専門機関の特権及び免除に関する条約(昭和 38 年条約第 13 号)
- 国際原子力機関の特権及び免除に関する協定(昭和 38 年条約第 14 号)
- 関税協力理事会を設立する条約(昭和 39 年条約第 11 号)
- 外交関係に関するウイーン条約(昭和 39 年条約第 14 号)
- 船員の厚生用物品に関する通関条約(昭和 43 年条約第 12 号)
- 教育的、科学的及び文化的資材の輸入に関する協定(昭和 45 年条約第9号)
- 展覧会、見本市、会議その他これらに類する催しにおいて展示され又は使用される物品の輸入に対する便益に関する通関条約(昭和 48 年条約第 11号)
- 職業用具の一時輸入に関する通関条約(昭和 48 年条約第 10 号)
- 民間航空機貿易に関する協定(昭和 55 年条約第 13 号)
- 東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターを設立する協定(昭和 56年条約第4号)
- 出版物の国際交換に関する条約(昭和 59 年条約第6号)
- 国家間における公の出版物及び政府の文書の交換に関する条約(昭和 59年条約第7号)
- 米州開発銀行を設立する協定(昭和 51 年条約第8号)
- アジア開発銀行を設立する協定(昭和 41 年条約第4号)
- 税関手続の簡易化及び調和に関する国際規約の改正議定書(平成 13 年条約第 10 号)
- 1965 年の国際海上交通の簡易化に関する条約
- 自由貿易協定(省略)
特殊な条約
- 日本国における英連邦戦死者墓地に関する協定(昭和 31 年条約第 14 号)
- 国際地震工学研究所を設立するための国際連合特別基金の援助に関する日本国政府と特別基金との間の協定(昭和 38 年条約第 15 号)
- アジア生産性機構の特権及び免除に関する日本国政府とアジア生産性機構との間の協定(昭和 42 年条約第5号)
- 日本国における経済協力開発機構の特権及び免除に関する日本国政府と経済協力開発機構との間の協定(昭和 42 年条約第6号)
- 国際連合大学本部に関する国際連合と日本国との間の協定(昭和 51 年条約第7号)
- 日本国政府と国際熱帯木材機関との間の本部協定(昭和 63 年条約第3号)
- 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定(令和5年条約第9号)
その他補完する法律
関税関係法令は、想像しているよりも幅が広く奥も深いです。