税関は2022年に発足150周年を迎え、『税関発足150周年記念誌』を発行しました。記念誌には、税関の歴史のほか、OB回顧録など、日ごろ触れられることの少ない情報も多く書かれています。税関手続きへの理解を深められますし、なにより物事の背景を知ることができる楽しい読み物でした。業界関係者なら読んでおいて損はありません。
『税関発足150周年記念誌』の構成
第1章 はじめに
第2章 税関 150年のあゆみ
第3章 直近 50年の主な出来事 ★
第4章 組織の紹介
第5章 特集記事 ★
第6章 写真で見比べる税関の今と昔
第7章 歴代関税局長・税関長一覧表
第8章 貿易統計の推移
★第3章 直近 50年の主な出来事、第5章 特集記事は、特に興味深いものになっています。COLUMNにも世間にはあまり知られていない情報が。
第3章 直近 50年の主な出来事
https://www.customs.go.jp/zeikan/pamphlet/zeikan150_kinenshi/pdf/150kinenshi_9.pdf
第3章は記念誌の1/3のページ占め、内容盛りだくさんです。なかでも、OB回顧録は必読です。8名の方がそれぞれの専門分野について振り返っています。例えば、関税分類、情報システム、AEO制度の裏話が紹介されています。
- 関税分類
HS条約の発効までの困難、SUVやメカデッキの分類バトル、その他分類の難しさ(「too technical」や「HSの非常識」)について。
・SUVは、貨物自動車か乗用車か
・ビデオテープレコーダの部分品であるメカデッキは、完成品か部分品か
・ガラス繊維製の密閉用シールの分類
電気機器ではその部分品に分類される
⇔ 機械や自動車ではガラス製品に分類される
・自動車用床マットの分類
繊維製、ゴム製の自動車用床マットはその材質により分類される
⇔ プラスチック製の自動車用床マットは自動車の附属品に分類される - 情報システム
事前旅客情報(API)*1:や乗客予約記録(PNR)*2を航空機旅客のリスク判定=テロ関連物資や不正薬物の密輸を阻止することを含む関税法上の取締りに使用するためのシステムについて。 - AEO制度
最初は「日本版C-TPAT」と呼ばれていたものが「AEO制度」と名称が変わった経緯。税関に承認申請をしても一向に承認が下りないことに業を煮やした事業者が、「(A)アホか、(E)えぇ加減に(O)下ろせ!」と嘯いていた話など。
第5章 特集記事
https://www.customs.go.jp/zeikan/pamphlet/zeikan150_kinenshi/pdf/150kinenshi_42.pdf
税関から見た二つの大震災、新型コロナウイルス感染症の影響、国際的イベントにおける税関の役割など。国際的イベントにおける税関の役割では、国際博覧会とオリンピック・パラリンピックでの実例の一部が紹介されています。
- 国際博覧会
日本万国博覧会(「EXPO’70」)当時の昔話と保税展示場制度の成り立ちについて。 - オリンピック・パラリンピック
東京2020オリンピックのはなし。公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が発給する確認証により大会関係物品を識別し、優先的に通関処理されたこと。また、競技を行ううえで必要なライフルや馬などを輸出入する場合の扱いについても簡単に触れられている。
COLUMN
COLUMNは税関ゆかりの地など計6本。そこで「日本税関の歌」が紹介されています。誕生から70年以上。今でも税関研修所で実施している新規採用職員研修の修了式で歌われているそうです。
日本税関の歌 作詞 西條八十、作曲・編曲 古賀政男、歌手・藤山一郎の吹込み。この方たちは昭和の時代の有名な方らしいです。税関サイトで曲を聞くことができます。