通関情報調査室

AEO輸出者ではたらく、元通関士のブログ Former REGISTERED CUSTOMS SPECIALIST

【税関の歴史】なぜ税関をCustomsと呼ぶのか?

  当サイトの記事には、プロモーションが含まれます

Customs(税関)とは、関税法の管理、関税・租税の徴収、貨物の輸入、輸出、移動、保管に関連する法令の適用に責任を負う政府機関のことです。

しかし、なぜ custom(習慣)の複数形 customsが税関という意味になるのでしょうか?

言語のはなし

複数形になったときに単数形とは別の意味を持つものは、分化複数というのだそうです。custom(習慣) - customs(税関)のほかに、duty(義務)- duties(関税)、good(善)- goods(商品)などがあります。※dutyは単数形でも関税の意味で通じそうではありますが。

customの語源

「custom」は、ラテン語のconsuescereに由来します。これは、習慣、慣習、伝統という意味を持っています。

dutyの語源

「duty」は、アングロ=ノルマン語の dueté に由来します。これは、料金、手数料、税金、支払われるべき金額という意味を持っています。

なぜcustoms、dutiesが税関、関税という意味なったのか

特定地域を通過する貨物や通行の旅客に対して料金や税をかけることは、古代都市国家の時代から自然発生的に行われており、このときの(のちには王室や教会、国王や政府に支払う)慣習的徴税 customary duties が、customs(税関)やduty(関税)の語源となった、というのが答えになります。

歴史のはなし

古代クロスボーダー取引が始まって以来、利害関係者で手続きの調和を図る取り組みが繰り返され、今日のcustomsにたどり着いたと考えることができます。

税関について
  • 中世ヨーロッパにおいて、各都市が域内に出入りする貨物などに対し、税(関税)を徴収する機関を設置していたことに始まります。
  • 近世に入って、フランスでは1666年コルベールにより内国関税が低率に統一され、1834年ドイツ関税同盟が結ばれたことなどにより、関税は国際間の国家領域を単位とする国境関税に発展し、それを徴収するための機関(税関)が設置されました。
関税について
  • 紀元前 4 世紀のインドの政治論書『アルタシャーストラ(実利論)』に、入ってくる品物に関税をかけることや、関税を払わなかった場合の罰金について書かれています。
  • ローマ帝国時代西暦137年に、シリアの砂漠にあるオアシス都市パルミラで制定されたパルミラ関税法が存在します。商品ごとの関税率をリストアップした仕組みが作られていました。
  • イングランドでは、関税は一般的に国王の慣習的な収入の一部でした。物品税、地税、その他の税金とは異なり、関税を課すのに議会の同意は必要ありませんでした。そのため、関税は王室の人気の収入源でした。

近代の税関の設立

  • 日本(税関)

   1872年に正式に「税関」として発足

  • アメリカ(CBP: Customs and Border Protection)

   1789年に設立、国家の最初の連邦機関の一つ

  • カナダ(CBSA: Canada Border Services Agency )

   1867年のカナダ連邦成立時に設立

  • フランス(DGDDI: Direction générale des douanes et droits indirects)

   革命後の1791年に設立、その起源はさらに古く、中世にまで遡る

  • イギリス(HMRC: HM Revenue and Customs (His Majesty's Revenue and Customs))

   長い歴史があり「Board of Customs」は1671年に設立、
   古くは9世紀にまで遡ることができる

  • ドイツ(ZOLL)

   1871年のドイツ帝国成立時、
   それ以前から各州に独自の存在していた税関を統一

  • イタリア(DOGANA)

   1862年に統一イタリア王国の一部として設立

参考文献

  1. JapanKnowledge
    https://japanknowledge.com/contents/nipponica/sample_koumoku.html?entryid=1687

  2. Strong & Herd LLP
    https://www.strongandherd.co.uk/international-customs-day-customs-duty-where-did-it-come-from

  3. Wikipedia
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%8E%E9%96%A2
  4. 『World Customs Organization and global trade: imprints and future paradigms』MM Parthiban, T Samaya Murali and G Kanaga Subramanian
    1902 01 WCJ v14n2 Parthiban et al.pdf (worldcustomsjournal.org)
  5. 『A.D.一三七年の「パルミラ関税法」について』小玉新次郎
    https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/249608/1/shirin_044_6_926.pdf

  6. カウティリヤの『実利論』
    https://coin-walk.site/E012.htm