通関情報調査室

AEO輸出者ではたらく、元通関士のブログ Former REGISTERED CUSTOMS SPECIALIST

輸出管理の現実 北朝鮮製ミサイルに米欧の部品

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そのむかし(2003年)、北朝鮮のミサイル部品の90%は日本から来た、と言われたことがありました*1

それから20年たったいま(2024年2月)、ウクライナで回収された北朝鮮製ミサイルに290以上の外国製電子部品が含まれており、そのうち75%は米国企業のものだったという調査結果が公表されています。

日本が輸出管理にまじめに取り組んだ結果、兵器に関連する物資の拡散が抑えられたのであればよいのですが...…輸出管理の現実(限界)も見え隠れします。

www.cnn.co.jp

元情報とその要約です。

North Korean missile relies on recent electronic components Ukraine field dispatch, February 2024*2

Conflict Armament Research (CAR)

Background
  • CARが2024年1月2日にウクライナハルキウで回収された北朝鮮弾道ミサイルの残骸を調査した。
  • CARの調査によると、ウクライナで回収された北朝鮮製ミサイルには290以上の外国製電子部品が含まれ、米国企業の部品も多く見られた。構成比: 米国75%、欧州16%、アジア9%。
  • その多くが過去3年以内に製造されたものであった。
The missile’s electronic components
  • 残骸には、主にナビゲーションシステムの一部を形成する電子部品が含まれており、米国企業のマークが多数見られた。
  • また、部品の生産に関連する8つの国(米国、ドイツ、シンガポール、日本、スイス、中国、オランダ、台湾)に本社を置く26社を特定した。
  • 部品の半数には識別可能な日付コードがあり、その75%以上は2021年から2023年の間に製造されたものであった。これらの製造時期から、ハルキウで回収されたミサイルは2023年3月以前に組み立てられたものではないと結論づけている。
A critical point for non-proliferation regimes

CARがウクライナで使用された北朝鮮弾道ミサイルに最近生産された国産以外の電子部品を発見したことは、現在の国際的な拡散防止体制に直面している重大な課題を浮き彫りにしている。

  1. 北朝鮮が2006年以来の国連安全保障理事会の制裁にもかかわらず、2023年までに製造された部品を組み込んだ高度な兵器を生産できること
  2. 長年の国際制裁にもかかわらず、北朝鮮が2022年のロシアによるウクライナへの全面侵攻を開始した後、この兵器をロシアに移転した可能性があること
  3. 北朝鮮が20年近く続いている制裁体制を回避できる堅固な調達ネットワークを構築している可能性が高いこと

CARの調査結果は、民生用電子部品の輸出を効果的に管理することの難しさを示しており、また北朝鮮のような国が国外の技術にどれほど依存しているかも示している。